2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧

29-30. ジェイガー:シンフォニア・ノビリッシマ / 交響曲第1番

ロバート・ジェイガー Robert Jager (1939-) の作風は手広く分布しています。一方の極には、後期ロマン派をはっきりと下敷きにした『ヒロイック・サガ』Heroic Saga (1982) や Epilogue: Lest We Forget (1991) があり、もうすこし20世紀的にすると、作者自…

27-28. A.リード:アルメニアン・ダンス / オセロ

アルフレッド・リード Alfred Reed (1921-2005) の唯一の単著に、"Balanced Clarinet Choir" (1955) があります。一言で言えばバンドにおけるコントラバスクラリネットの必要性を説く本ですが、コントラバス音域の楽器が和音を支える重要性を述べるにあたっ…

26. フサ:プラハ1968年のための音楽

カレル・フサ Karel Husa (1921-2016) の名作『プラハ1968年のための音楽』Music for Prague 1968 (1968) について話すにあたっては、まずその楽器編成に触れることになります。フルートセクションやトランペットが最大8パートに分かれ、バスサックスやコン…

24-25. チャンス:呪文と踊り / 朝鮮民謡の主題による変奏曲

ご多分に漏れず、ジョン・バーンズ・チャンス John Barnes Chance (1932-1972) もまず中学校と高校で吹奏楽に触れています。高校時代に書いた管弦楽曲はラフマニノフ風のロマンティックな音楽で、大学を卒業するころに影響を受けていたのは、シベリウスやシ…

23. マクベス:マスク

ウィリアム・フランシス・マクベス William Francis Mcbeth (1933-2012) の吹奏楽作品リストは20代のころに遡ります。学生時代の作品の一つである『第二組曲』Second Suite (1960) は、師であるC. ウィリアムズとの距離が近い、健康的に前進していく音楽です…

22. ネリベル:2つの交響的断章

新古典主義の子、ということではチェコ出身のヴァーツラフ・ネリベル Václav Nelhýbel (1919-1996) も例外ではありません。チェコ時代やアメリカ移住直後の作品を聴く機会がないのは残念ですが、吹奏楽の分野で名声を確立した1960年代前後の作品を聴くと、鋭…

21. ベンソン:落葉

若いころから打楽器奏者として活動していたウォーレン・ベンソン Warren Benson (1924-2005) は、仲間の管楽器奏者が新しいレパートリーを欲していることを知って、管楽器や吹奏楽のための作品に力を注いだと語っています。作品リストのほぼ最初から吹奏楽作…

20. ビリク:ブロックM

ジェリー・ビリク Jerry H. Bilik (1933-) がコンサートマーチ『ブロックM』Block M (1955) を作曲したとき、彼はまだミシガン大学で音楽教育を学ぶ学生でした。ミシガン大学のバンドがこの作品を演奏したときのプログラムがネットにありますが*1 、ビリク (…

19. C.ウィリアムズ:交響組曲

(アメリカの)吹奏楽曲創作史に流れを見出すなら、クリフトン・ウィリアムズ Clifton Williams (1923-1976) がその軸に組み入れられることは間違いありません。作曲賞によって作品創作に(限定的とはいえ)評価軸が形成されていく先頭に位置すること、のち…

18. ジャンニーニ:交響曲第3番

ヴィットリオ・ジャンニーニ Vittorio Giannini (1903-1966) の吹奏楽作品の特色は、そのロマンティックな色彩にあるのではないでしょうか。彼の作風は、19世紀ロマン派そのものの初期*1から、少しずつ同時代の響きを取り入れてテンションや開放感の幅を広げ…

17. H.O.リード:交響曲『メキシコの祭り』

ハーバート・オーウェン・リード Herbert Owen Reed (1910-2014) の作風はやや捉えにくいものがありますが、大づかみにするなら新古典主義の流れに連なる明快なテクスチュアに加えて、アメリカ大陸のフォークロアを取り込む志向が見出せます。例えば『悲運の…

16. ロバート・ラッセル・ベネット:古いアメリカ舞曲による組曲

生涯で20曲近くの吹奏楽作品*1を残したロバート・ラッセル・ベネット Robert Russell Bennett (1894-1981) は、同時代のアメリカの作曲家の多数と同様、パリでナディア・ブーランジェに師事し、新古典主義の潮流をくぐっています。『4つの前奏曲』(1974) あ…

15. W.シューマン:ニューイングランド三部作

ウィリアム・シューマン William Schuman (1910-1992) も新古典的なアメリカの作曲家の一人で、『第3番』(1941) をはじめとする交響曲群で知られています。ほかの作曲家たちと比べるとシューマンは外向的な親しみやすさを素直に打ち出す方向とも親和性があり…