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吹奏楽曲を100曲+α 挙げて聴いていくブログです。 ・現行の吹奏楽の世界に親しむための選曲のつもりで考えました。この記事がメインコンテンツで紹介はおまけです。 ・日本の吹奏楽界を軸に、演奏されている・言及されていることを重視したので、個人的に推…

A01. ヘンデル:王宮の花火の音楽

吹奏楽のたどってきた道について、具体的な楽曲というものが残っていない時代にまでひとまず遡るとして、管(打)楽器はおもにその音量ゆえに、権力者がその威を振るう必要がある場面、あるいはそこまでいかなくとも共同体の結びつきと関わるかたちで役立てら…

50. グレグソン:剣と王冠

救世軍のもとで幼いころからブラスバンドに触れ、10代での初出版がブラスバンド作品だった*1エドワード・グレグソン(グレッグスン) Edward Gregson(1945-)についても、バンド分野への貢献はまずブラスバンドについて語るべきでしょう。Prelude for an Oc…

49. ブルジョワ:シンフォニー・オブ・ウィンズ

若いころから作曲を学び18歳で交響曲第1番 (1960) を発表する一方で、オーケストラでチューバを吹いていた経験もあるというデレク・ブルジョワ(ブージェワ)Derek Bourgeois (1941-2017) は、やはりイギリスの作曲家らしくブラスバンドからバンドの分野に接…

48. ウィテカー:ゴースト・トレイン

90年代半ばから2000年代は、1970年前後生まれの世代の作曲家たちがしだいに頭角を現していった時代にあたりますが、最初の器楽作品である『ゴースト・トレイン』Ghost Train Triptych (1993-95) で注目を集めたエリック・ウィテカー Eric Whitacre (1970-) …

47. マー:エンデュランス

トロンボーン奏者としてバンドに関わっていた大学時代、ティモシー・マー Timothy Mahr (1956-) はバンドの弱奏、その「美しさ」に気づかされたと語っています。このエピソードからは、彼がオストウォルド賞を与えられた2作*1、『空高く舞う鷹』The Soaring …

46. ギリングハム:ウィズ・ハート・アンド・ヴォイス

シュワントナーの項でも書いたように、1980年代後半から90年代にかけてはバンド作品における打楽器、とくに鍵盤楽器や金属打楽器の活躍が大きく広がった時期ですが、デヴィッド・ギリングハム David Gillingham (1947-) はその潮流を代表する一人と言えるで…

45. ホルジンガー:春になって、王達が戦いに出るにおよんで

バリトンを吹いていた大学のバンドで、当時新曲だったネリベルの『コラール』や『トリティコ』に出会って衝撃を受けた*1と語り、翌年には処女作『プレリュードとロンド』(1966) を書いているデヴィッド・ホルジンガー David Holsinger (1945-) ですが、バン…

44. シェルドン:マナティー・リリック序曲

技術的難易度を抑えた作品を主な活動分野とする作曲家としてはロバート・シェルドン Robert Sheldon (1954-) も、大学で音楽教育学の学位を取得し、公立学校での音楽指導からキャリアを始めています。その後バーンハウス社から1981年に『フォール・リヴァー…

42-43. スウェアリンジェン:インヴィクタ / ノヴェナ

ジェイムズ・スウェアリンジェン James Swearingen (1947-) は作編曲家として以外にも、アメリカにとどまらず世界中で活動する客演指揮者・バンドディレクターとしての肩書を持っています。そのキャリアの始まりはオハイオの公立学校での器楽音楽の教師で、…

ex. 低グレード作品

ここまで紹介してきた「代表的な」吹奏楽作品たちは、音楽学部での教育・研究とも結びついた大学バンドか、軍楽隊が多数を占める職業バンドを念頭に、高い演奏技術を要求する作品が主でした。しかし吹奏楽のための作品が演奏される媒体としては、必ずしも理…

41. デ・メイ:交響曲第1番『指輪物語』

80年代に入る前後からオランダで次々名前を広めていった作曲家たち*1のなかでも、ヨハン・デ・メイ Johan de Meij (1953-) が吹奏楽の編曲*2からキャリアを始め、初めて書いたオリジナルな大規模作品である交響曲第1番『指輪物語』Symphony No. 1 "Lord of t…

39-40. ヴァン・デル・ロースト:アルセナール / カンタベリー・コラール

ベルギーのヤン・ヴァン・デル・ロースト Jan van der Roost (1956-) も、ヨーロッパの吹奏楽界に一時代を画したスターと言える存在です*1。ヨーロッパのバンド作曲家の常として、コンサートバンドだけでなく英国式ブラスバンドにも大小問わず作品を提供して…

37-38. スパーク:祝典のための音楽 / 宇宙の音楽

フィリップ・スパーク Philip Sparke (1951-) は、70年代後半から80年代*1にブラスバンド界のスターとして登場し、そのまま現在に至るまで第一線の作曲家として支持されています。個々の作品のどれを推すかについては詳しい人がたくさんいるので、雑な区分け…

appx. 英国式ブラスバンド - テストピース主要作曲家、作品(未整理)

ひとまず2000年前後までに限る。太字はブラスバンド的に特に重要と思われる作曲家。 Percy Fletcher: Labour and Love (1913), An Epic Symphony (1926) Cyril Jenkins: Coriolanus (1914), Life Divine (1921) Gustav Holst: A Moorside Suite (1928) Edwar…

ex. 戦後ヨーロッパの吹奏楽作品

戦前に書かれた曲にはジャンルの核となる吹奏楽作品が並ぶヨーロッパですが、1940年代あたりからレパートリー創出の中心は完全にアメリカに移り、管楽合奏・管楽オーケストラ作品*1を除くと寂しい状況が続くことになります。――という話をもう少し細かく言う…

36. シュワントナー:…そしてどこにも山の姿はない

ジョセフ・シュワントナー Joseph Schwantner (1943-) が最初に触れた楽器がギターであり、その後もピアノやハープ、打楽器といった音が減衰する楽器ばかりを偏愛するようになるのはとても示唆的なことに思えます。その資質と、管楽器音楽との親和性は決して…

34-35. ネルソン:ロッキー・ポイント・ホリデー / パッサカリア

ロン・ネルソン Ron Nelson (1929-) は世代としてはチャンスやマクベスに近いころの人で、『ロッキー・ポイント・ホリデー』Rocky Point Holiday (1966) も彼らの試みと並行して書かれた作品ですが*1、この時期塗り替えられはじめていた吹奏楽の音色のパレッ…

32-33. バーンズ:交響曲第3番 / パガニーニの主題による幻想変奏曲

ジェイムズ・バーンズ James Barnes (1949-) が吹奏楽界の重鎮であることは間違いありませんが、改めて考えてみると、アメリカにおけるその立場は特徴的なものと言えそうです。その音楽は、ここまで繰り返し言及してきた「アメリカナイズされたロマンティシ…

31. C.T.スミス:フェスティヴァル・ヴァリエーションズ

日本においてクロード・トーマス・スミス Claude Thomas Smith (1932-1987) といえば、その創作歴のなかではどちらかといえば少数に属する、華麗で奏者に大きな負荷をかける作品――特に早い晩年に入って書かれた*1、『フェスティヴァル・ヴァリエーションズ』…

29-30. ジェイガー:シンフォニア・ノビリッシマ / 交響曲第1番

ロバート・ジェイガー Robert Jager (1939-) の作風は手広く分布しています。一方の極には、後期ロマン派をはっきりと下敷きにした『ヒロイック・サガ』Heroic Saga (1982) や Epilogue: Lest We Forget (1991) があり、もうすこし20世紀的にすると、作者自…

27-28. A.リード:アルメニアン・ダンス / オセロ

アルフレッド・リード Alfred Reed (1921-2005) の唯一の単著に、"Balanced Clarinet Choir" (1955) があります。一言で言えばバンドにおけるコントラバスクラリネットの必要性を説く本ですが、コントラバス音域の楽器が和音を支える重要性を述べるにあたっ…

26. フサ:プラハ1968年のための音楽

カレル・フサ Karel Husa (1921-2016) の名作『プラハ1968年のための音楽』Music for Prague 1968 (1968) について話すにあたっては、まずその楽器編成に触れることになります。フルートセクションやトランペットが最大8パートに分かれ、バスサックスやコン…

24-25. チャンス:呪文と踊り / 朝鮮民謡の主題による変奏曲

ご多分に漏れず、ジョン・バーンズ・チャンス John Barnes Chance (1932-1972) もまず中学校と高校で吹奏楽に触れています。高校時代に書いた管弦楽曲はラフマニノフ風のロマンティックな音楽で、大学を卒業するころに影響を受けていたのは、シベリウスやシ…

23. マクベス:マスク

ウィリアム・フランシス・マクベス William Francis Mcbeth (1933-2012) の吹奏楽作品リストは20代のころに遡ります。学生時代の作品の一つである『第二組曲』Second Suite (1960) は、師であるC. ウィリアムズとの距離が近い、健康的に前進していく音楽です…

22. ネリベル:2つの交響的断章

新古典主義の子、ということではチェコ出身のヴァーツラフ・ネリベル Václav Nelhýbel (1919-1996) も例外ではありません。チェコ時代やアメリカ移住直後の作品を聴く機会がないのは残念ですが、吹奏楽の分野で名声を確立した1960年代前後の作品を聴くと、鋭…

21. ベンソン:落葉

若いころから打楽器奏者として活動していたウォーレン・ベンソン Warren Benson (1924-2005) は、仲間の管楽器奏者が新しいレパートリーを欲していることを知って、管楽器や吹奏楽のための作品に力を注いだと語っています。作品リストのほぼ最初から吹奏楽作…

20. ビリク:ブロックM

ジェリー・ビリク Jerry H. Bilik (1933-) がコンサートマーチ『ブロックM』Block M (1955) を作曲したとき、彼はまだミシガン大学で音楽教育を学ぶ学生でした。ミシガン大学のバンドがこの作品を演奏したときのプログラムがネットにありますが*1 、ビリク (…

19. C.ウィリアムズ:交響組曲

(アメリカの)吹奏楽曲創作史に流れを見出すなら、クリフトン・ウィリアムズ Clifton Williams (1923-1976) がその軸に組み入れられることは間違いありません。作曲賞によって作品創作に(限定的とはいえ)評価軸が形成されていく先頭に位置すること、のち…

18. ジャンニーニ:交響曲第3番

ヴィットリオ・ジャンニーニ Vittorio Giannini (1903-1966) の吹奏楽作品の特色は、そのロマンティックな色彩にあるのではないでしょうか。彼の作風は、19世紀ロマン派そのものの初期*1から、少しずつ同時代の響きを取り入れてテンションや開放感の幅を広げ…