ex. 低グレード作品

ここまで紹介してきた「代表的」な吹奏楽作品たちは、音楽学部での教育・研究とも結びついた大学バンドか、軍楽隊が多数を占める職業バンドを念頭に、高い演奏技術を要求する作品たちが主でした。しかし吹奏楽のための作品が演奏される媒体としては、必ずしも理想的な編成や演奏技術を備えていないバンド——中学校・高校のカリキュラムの一環で組織されるバンドが一つの典型例でしょう——が数としてはむしろ大勢であり、またそれを念頭に良好な響きが得られるよう書かれた作品も、「吹奏楽のための作品」を考えたときには無視することが不可能な存在感を持っています*1

とりわけこの分野の受容や伝承は個々人の体験と不可分に結びついている度合いが強く、もとより語り落としは不可避ではありますが、広く見られる6段階の演奏難易度表示*2ではグレード3、あるいは場合によってグレード4をひとまずの上限に、低難易度作品――高校以下の教育現場を意識した作品――にある程度以上力を注いだ作曲家たちについて、いくらかの見通しを付けてみたいと思います。ディスクとしては、作曲・紹介当時の録音が軒並み手に入りにくくなっているなか、木村吉宏/広島WOの『バンド・クラシックス・ライブラリー』シリーズ (2003-2009) は以下述べるような低難易度作品を軸として回想する企画になっており*3、演奏含めてレファレンスとして推薦できます。

 

アメリカの教育機関での音楽活動ははじめに合唱を、次いでオーケストラを軸に発展していき、バンド活動は第一次大戦の前後から、大恐慌と娯楽の多様化の影響を受けたプロバンドの衰退で「バンドの黄金時代」が終わりを告げるのと入れ替わるように、アメリカ全土で成長していきます。1923年には最初のスクールバンドの "national" コンテストが開かれ、26年の第2回の時点で2段階の予選が行われるようになるという活況でしたが、当時バンドのレパートリーはまだ体系化されておらず、特に難易度の低いレパートリーについては、ヘンリー・フィルモアがハロルド・ベネット名義で発表した作品群のような例はありましたが決して潤沢とは言えませんでした。30年代から作編曲作品を発表しこの分野のレパートリー供給に乗りだした代表格が、打楽器奏者として出発し、のちに教育に関わるようになった*4ポール・ヨーダ Paul Yoder (1908-1990) で、すこし遅れて40年前後から、軍楽隊や放送業界で活動していたハロルド・ワルター Harold L. Walters (1918-1984) 、イタリアからの移民でオーボエ奏者だったジョセフ・オリヴァドーティ Joseph Olivadoti (1893-1977) などもそこに加わります。

ヨーダーの*5『エキスポ '70』Expo '70 (1968)*6 『ガラスの靴』Glass Slipper (1948) 、ワルターズの*7『フーテナニー』Hootenanny (1963) 『インスタント・コンサート』Instant Concert (1970) 『音楽世界めぐり』Bands around the World (1972)*8 、オリヴァドーティの*9『ばらの謝肉祭』Carnival of Roses (1947) といった現在もレパートリーに残っている彼らの作品は、基本的に当時の「軽音楽」の様式で書かれています。ジャズやラテンのビートによるダンス音楽(マーチを含む)か、オペラ/オペレッタの序曲・パラフレーズ風のポプリ*10かという違いはありますが、おおむねそれまでのバンドレパートリーの主流を引き継ぎ、バラエティに富んだ展開や気取らずシンプルなサウンドを備えています*11

日本では『中世のフレスコ画Medieval Fresco (1967)『百年祭組曲Centennial Suite (1971) など比較的折り目正しいスタイルの作品*12を軸に受容されたジョン・モリセイ(モリッシー)John Morrissey (1906-1993) も、デビュー作の Caribbean Fantasy (1942) や An American Weekend (1950) といった作品はダンス音楽のビートを基本にした音楽でした。

 

もうすこし時代が下って50年代に入ると、大学バンドやプロバンドの方面に筆を執る作曲家が次々増えてきたのと軌を一にして、兵役やビッグバンドでの仕事の一方でカステルヌーヴォ=テデスコに師事したフランク・エリクソン Frank Erickson (1923-1996) 、EWE前夜のイーストマン音楽院でバーナード・ロジャースに学んだチャールズ・カーター Charles Carter (1926-1999) 、ヒンデミットに師事したのち放送業界でも活躍したクレア・グランドマン Clare Grundman (1913-1996) 、ユージン・グーセンスやハワード・ハンソンに師事したウィリアム・P・レイサム William P. Latham (1917-2004) といった面々がこの分野に参入してきます。

エリクソン*13の『幻想曲』Fantasy for Concert Band (1955)『トッカータToccata for Band (1957) 、カーター*14の『管楽器のための序曲』Overture for Winds (1959)『交響的序曲』Symphonic Overture (1963) といったこの時期に発表された作品を見ていくと、急-緩-急のいわゆる「序曲形式」が型としてある程度確立しており、また伝統的なリズム構造や調性に、新古典/コープランド風のシンコペーションや旋法的な要素を含む和声、またアクセントとしてのポピュラー音楽の要素を加えた、のちのこの分野における一つの雛型となる作風が見てとれます。ただし曲構成に関してはエリクソンの『ソナチネSonatina for Band (1962) やカーターの『古典様式による序曲』Overture in Classical Style (1954) のような擬古典的な姿勢の作品はあてはまりませんし、エリクソンは Balladair (1958) や Air for Band (1966) で*15、コラール風のゆるやかな単一曲という、また一つの後年の典型ジャンルを開拓してもいるのですが。

いずれにせよ、ジム・コーディル Jim Andy Caudill (1932-) *16の素直な響きを強調した吹奏楽のための民話』Folklore for Band (1964) や『ランドマーク序曲』Landmark Overture (1974)、ピアニストとして活躍したあと放送業界に移ったシーザー・ジョヴァンニーニ Caesar Giovannini (1925-2017) の、より和声的な薬味が利いた『コラールとカプリチオ』Chorale and Capriccio (1965) や『序曲 変ロ長調Overture in B-flat (1966) *17、さらに時代が下り鋭角的な響きを組み込んでいったジャレド・スピアーズ Jared Spears (1934-) の*18『キンバリー序曲』Kimberly Overture (1969)『第3組曲Third Set (1972) やリーランド・フォースブラッド Leland Forsblad (1920-2006) の諸作 *19、不協和な響きの「前衛的」な語法*20や生のポピュラー音楽の語法も大胆に混淆したティモシー・ブロージュ(ブロージ)Timothy Broege (1947-) の『第5番』 Sinfonia V: Symphonia Sacra et Profana (1973) をはじめとする『シンフォニア』群や『首なし騎士』Headless Horseman (1973) 、といった後年の作品は、この流れの上で生まれたものと考えていいでしょう。

先ほど言及したもう2人、クレア・グランドマンは*21第1番 (1948) に始まる『アメリカ民謡狂詩曲』American Folk Rhapsody シリーズや『ケンタッキー1800』Kentucky 1800 (1954) 『ヘブリディーズ組曲Hebrides Suite (1962) といった一連の民謡編曲でホルストから続く伝統をつなぎ*22、レイサムは擬バロック調の『3つのコラール前奏曲Three Chorale Preludes (1956) と Court Festival (1957) で知られます*23。先に挙げてきた作曲家が「モダン」な方向に進んだのと比べると、新古典的な技法を通過しながらもサウンド的には伝統的な表情の作風で、のちに隆盛を迎える、調性のロマンティックな表現力を求める流れとも共通します。

 

ほかの記事で紹介してきたような高度な技術的要求をする作品群が新古典主義の主導で蓄積していったのと並行して、こうした低難易度作品の発展も進んできたわけですが*24、もちろん両分野の前提条件に基づく傾向の違いも存在します。低難易度作品の分野では、音を多くできない、リズム的に複雑なものは書きにくい、というのは当然ですがそれ以上に、各楽器の音域上の制約や、一人一人の奏者の責任を大きくできないという事情が働くため、オーケストレーション的には楽器の重ねを多く、組みあわせて使う傾向にあり、響きやすく低音から積みあげたサウンドの割合が増えます。60年代以降、楽器の重ねを薄くしてアンサンブルの明快さを志向する流れも存在したのを尻目にやや違った方向を向き、いままで「シンフォニック」と形容してきたバンドの鳴らし方におのずと接近することになります。マクベス『聖歌と祭り』(1963)『カント』(1978)『エスタンピー』(1999) 、C.T.スミス『エンペラータ序曲』(1964)『聖歌』(1978) のように厚いサウンドを持ち味とする作曲家たちの有名作はこの流れで考えられます。

やや遡れば、デトロイトで音楽教育にたずさわり『セコイア』Sequoia (1941) と『海の肖像』Sea Portrait (1956) で知られるホーマー・ラガッシー Homer Lagassey (1902-1982) の、旋法的・ポピュラー風の和声を取り入れながらも濃厚にロマンティックな表情は、同時代のアメリ吹奏楽の流れでは目立って見えます。この延長線上に、たとえばリード70年代の代表作群にもつながる重厚なサウンドと感情の表出が聴かれるロナルド・ロ・プレスティ Ronald Lo Presti (1933-1985) の『あるアメリカ青年のためのエレジーElegy for a Young American (1967) があるのでしょうし、ひいてはリード 、バーンズ、カーナウといった面々が大曲と地続きの語法で存分に腕をふるう*25前提になったのだろうと思います。もっぱら低難易度作品で知られる作曲家のなかでは、分厚いサウンドと、ポピュラー音楽の要素が強い和声の陰影や歌謡性が特色のレックス・ミッチェル Rex Mitchell (1929-2011) もこの近傍でしょう*26

 

また、1970年前後になると、ミッチェル『序奏とファンタジア』 (1970) 、カーター『ラプソディック・エピソード』Rhapsodic Episode (1971) 、すこし遅れますがエリクソン『序曲祝典』Overture Jubiloso (1978) といった作品で、ラテン音楽由来の3-3-2のリズム*27+ポピュラー音楽におけるドラムスと同様にリズムの刻みで常に小節を埋めるパーカッション、というのちの定番語法*28が確立します。技術的な制約から細かい音符を書き込めない状況で、アレグロに推進力を与える役をスネアドラムなどパーカッションに与えるのが有効なのはマクベス『聖歌と祭り』ネリベル『フェスティーヴォ』で確認済みですし、ポピュラー音楽からの異物扱い*29でないシンコペーションエリクソントッカータ』などに現れていますが、この時期に二つが合わさったことで、初期から軽音楽の要素を積極的に取り入れてきたこの分野の音楽はまた一つ人好きのする要素を得ることになります。

 

以上を背景にして、『エグザルテーション』Exaltation (1978)『ノヴェナ』Novena (1980) で登場したのがジェイムズ・スウェアリンジェン James Swearingen (1947-) でした。技術的・表現的な親しみやすさを前提として、シンコペーションを多用したリズムを打楽器で支えながら、素直な調性を基調に旋法的で「モダン」なアクセントを随所に加え、要所を「シンフォニック」な壮大さで締める作風は一種模範的なもので、続けて80年代中盤~90年代初頭に登場したロバート・シェルドン Robert Sheldon (1954-) 、エド・ハックビー Ed Huckeby (1948-)*30 やデヴィッド・シェーファー David Shaffer (1953-)*31 とともに、低難易度作品のイメージを一度固定してしまうインパクトを持ちました。

いわゆる「序曲形式」の規模の作品以外にも、スウェアリンジェン『ロマネスク』Romanesque (1982) を一つの画期に*32、ヒュー・スチュアート『聖歌』A Hymn for Band (1985) 、ホルジンガー『フィリップ・ブリスの讃美歌による』(1988) 、アンドリュー・ボイセンJr. Andrew Boysen Jr. (1986-) I Am (1990) 、ラリー・デーン Larry Daehn (1939-) As Summer Was Just Beginning (1994) With Quiet Courage (1996) 、ティケリ『アメイジング・グレイスAmazing Grace (1994)『シェナンドー』Shenandoah (1999) と緩徐系のレパートリーも充実していきます。

『エンカント』Encanto (1989)『ブラック・ホークの舞うところ』Where the Black Hawk Soars (1995) のロバート・W・スミス Robert W. Smith (1958-) や、『ホープタウンの休日』Hopetown Holiday (1998)『セドナSedona (2000) のティーヴン・ライニキー Steven Reineke (1970-) もこうした定型に乗った作曲家たちですが、R.W.スミスは『嵐の中へ』Into the Storm (1994)『テンペストThe Tempest (1995)『機関車大追跡』The Great Locomotive Chase (2000) といった作品で、打楽器の大量動員や短旋法の活用による劇的なサウンド*33を広め、マイケル・スウィーニー Michael Sweeney (1952-)*34 などが追随しますし、ライニキーは『神々の運命』Fate of the Gods (2001) や『魔女と聖者』The Witch and the Saint (2005) などでやはりドラマティックで大きなコントラストのついた展開を持ちこんでいます*35

 

2000年代に入ってからで目に付くトピックといえば、バンド指導者として名を馳せたリチャード・ソーセイド Richard Saucedo (1957-) の作品出版が大幅に進んだことでしょうか*36。幅広いバンドが取り上げることを意識した Awakening Hills (2003) Flight of the Thunderbird (2004) Into the Clouds! (2007) As Tears Fall on Dawn's New Light (2013) といった作品群は、彼が深く関わっているマーチングバンドを思わせるような打楽器、特に鍵盤打楽器を重用した華やかなサウンドが特徴的です*37。ほかでも書いてきたように、打楽器・鍵盤打楽器の役割の拡大は低難易度書法との相性が良いとともに吹奏楽界全体の趨勢でもあり、こうした色彩感はたとえばブライアン・バルメイジス Brian Balmages (1975-) などに引きつがれます。Midnight on Main Street (2009) Love and Light (2020) のように奏者に高度な要求をする作品でも知られる一方で、ポピュラー音楽の語法を直接的に取り入れた Blue Ridge Reel (2013) Groove Music (2013) 、このジャンルの本道とでもいうべき明朗さを持った Summer Dances (2000) Among the Clouds (2004) When Spirits Soar (2006) Sparks (2007) 、民俗的な題材を扱った Arabian Dances (2009) Within the Castle Walls (2012) 、抒情性を前に出した Rain (2008) Endless Rainbows (2013) 、ドラマティックな効果を活用した Moscow, 1941 (2006) Reverberations (2009) Nevermore (2011) Open Space (2014) など、これまでのジャンルの蓄積の上にいながらさらに色彩感を拡張した作品群が広く知られており、現在のこの分野を先導する一人といえます。

 

そのほかにも現在、Larry Neeck (1950-)*38 Larry Clark (1963-) *39 Brant Karrick (1960-)*40 William Owens (1963-)*41 Todd Stalter (1966-)*42 Michael Markowski (1986-)*43 Matt Conaway (1979-)*44 Michael Oare (1960-)*45 Alex Shapiro (1962-)*46 Randall Standridge (1976-)*47 Aaron Perrine (1979-)*48 David Biedenbender (1984-)*49 Carol Brittin Chambers (1970-)*50 Tyler S. Grant (1995-)*51 などの作曲家が積極的にこの分野に作品を提供しています*52。オストウォルド賞(2011- 隔年)、クロード・T・スミス記念コンテスト Claude T. Smith Memorial Composition Contest (1985-) 、NBAメリル・ジョーンズ記念コンテスト Merrill Jones Memorial Composition Contest (1992-) 、NBA/Alfred Music Young Band Composition Contest (2012-) 、CBDNA Young Band Composition Contest (1999-) のように楽曲の難易度を指定した作曲賞も多くありますし、吹奏楽の有名曲の簡易編曲*53、複数示された選択肢から演奏側が楽器を割り当てていくフレックス編成(adaptable band)といった興味深いトピックも持ち上がっている分野です。

ヨーロッパでも、いわゆる Light Music の分野を横目でにらみ、時に重なりながら、ウェニャン、リインスホーテン、フラクブルジョワ、デ・ハーン兄弟、スパークヴァン・デル・ロースト、ジェイムズ・レイ James Rae (1957-) 、ゴーブ、メルテンス、ヨハン・ネイス Johan Nijs (1963-) 、フェラン、ドス、オットー・シュワルツ、ジャン=ピエール・ヘック Jean-Pierre Haeck (1968-) 、マルク・ジャンブルカン Marc Jeanbourquin (1977-) 、ピーター・ミーチャン Peter Meechan (1980-) 、ティエリー・ドゥルルイエル Thierry Deleruyelle (1983-) 、ティーモ・クラース Thiemo Kraas (1984-) などがこの分野のカタログを充実させていて、シンガポールに拠点を置くベンジャミン・ヨー Benjamin Yeo (1982-) *54のような存在もいますし、日本でもアメリカに留学した後藤洋 (1958-) *55や、海外での楽譜出版が多い西邑由記子 (1967-)*56、和田直也 (1986-)*57 などが意識的に、編成や難易度に配慮した作品を多く送り出しています。

Music of Brian Balmages 1

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Simply More Sparke CD

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*1:アメリカの中学校・高校ではオーケストラのカリキュラムも一般的で、管弦楽弦楽合奏でも同様に編成や難易度に配慮した作品が市場を形成しています。ヨーロッパの作曲家がウィンドバンド/ブラスバンド/ファンファーレオルケストを行き来するように、アメリカのこの分野ではバンド/管弦楽/弦楽合奏、くわえてマーチングバンド/ビッグバンドで行き来が起きる、と言えるかもしれません。

*2:この分類は必ずしも統一されているわけではなく、日本やヨーロッパでははっきりとした基準はありませんし、アメリカの場合、出版社や各団体(主に州の指導者協会)によって判断基準は示されますが、具体的にどの作品がどこに分類されるかはまちまちです。ここでは出版社によるものを中心に、確認できた各所のグレード表示を加味して判断します。

*3:そうした「クラシック」のなかに含まれる技術的要求の高い作品は、リード、バーンズ、ジェイガー『ヒロイック・サガ』『シンフォニア・ノビリッシマ』というロマンティックな音調が特徴な作品群が多いのが、日本のレパートリー形成という面で興味深い現象です。

*4:この前後にイリノイ大学のA.A.ハーディングや、のちにミシガン大学のバンドを率いるウィリアム・レヴェリなどと知り合っています。

*5:ほかに『ハスケルの暴れん坊』Haskell's Rascals (1954)『ドライ・ボーンズ』Dry Bones (1949) など。当時新興出版社だったNeil A. Kjos から出版した、クロード・ブライアン・スミス Claude Bryan Smith とハロルド・バックマン Harold Bachman との共作のバンド教本も「代表作」に数えられるでしょう。

*6:『パチンコ』Pachinko (1968) とともに、1965年から数度行われた日本滞在の産物。日本に限らずヨーロッパの各国を訪れてバンド運動の裾野を広げる活動にたずさわり、1949年の立ち上げにも関わったアメリカ有数の教育音楽における情報交換の場であるミッドウェスト・クリニックでも海外のバンドの紹介を推進しました。

*7:ほかに『ジャマイカ民謡組曲Jamaican Folk Suite (1966) 『西部の人々』The Westerners (1956) 『リートニア序曲』Leetonia (1957) など。

*8:ヨーダーと共作。

*9:ほかに『イシターの凱旋』Triumph of Ishtar (1946)『ポンセ・デ・レオン』Ponce de Leon (1962) など。

*10:コルネット奏者でバンド指導者だった、『ヒッコリーの丘』Hickory Hill (1957) のカール・フランカイザー Carl Frangkiser (1894-1967) もここに分類していいと思います。

*11:なお、後述する作曲家が参入して「正装」を意識したスタイルの作品が増える50年代以降でも、軽音楽/ライト・クラシック/シンフォニック・ポップス/吹奏楽オリジナル・ポップスとこのジャンルの距離の近さが変わるわけではなく、多くの編曲作品とともに、グレン・オッサー Glenn Osser (1914-2014)『ビギン・フォー・バンド』Beguine for Band (1954) ジョン・カカヴァス John Cacavas (1930-2014)『ブラス・フィーバー』Brass Fever (1978) ジェイ・チャッタウェイ Jay Chattaway (1949-)『スパニッシュ・フィーバー』Spanish Fever (1978) 、あるいは吹奏楽版も本人名でクレジットされているルロイ・アンダーソン Leroy Anderson (1908-1975) の作品群などが演奏されつづけます。

*12:ほかに『式典のための音楽』Music for a Celemony (1963)『皇帝への頌歌』Royal Processional (1968) など。

*13:ほかに『リズム・オブ・ザ・ウィンズ』Rhythm of the Winds (1964)『ブルーリッジ序曲』Blue Ridge Overture (1976) など。バンドにさらに大規模な作品を提供しようと書かれた3つの交響曲 (1954, 1958, 1984) 、調性感の希薄な部分を含む Saturnalia (1967) 、バルトークやクルシェネク、ストラヴィンスキーの編曲ではまた違う面が見えます。

*14:ほかに『管楽器のためのソナタSonata for Winds (1969) 『クイーンシティ組曲Queen City Suite (1970)『序奏とカプリス』Introduction and Caprice (1973) など。

*15:演奏頻度は落ちますが Chorale for Band (1963) も。

*16:コーディルはフェネルの講座を受講したことがあり、『民話』はフェネルに献呈されています。

*17:シンプルなマーチ群や編曲作品でも知られるジョン・エドモンソン John Edmondson (1933-2016) の『ページェントリー序曲』(壮麗なる序曲)Pageantry Overture (1970) もここに並べておきたいです。

*18:ほかに『ノヴェレッテ』Novelette (1978)『ウォバッシュ地方の伝説』Wabash County Saga (1979) At a Dixieland Jazz Funeral (1980)『雅歌』Canticles (1982)『ニューリヴァー組曲New River Suite (1987) など。打楽器アンサンブルの分野もよく取り上げられます。

*19:Edifice (1973) 、Introit and Bravura (1973、”Edifice” とともにスコアリングは Wayne Livingston) 、Synopsis (1974) 、Prerogatives (1975) 、『連祷とアレルヤLitany and Alleluia (1976) など。

*20:60年代以降は、コンポーザー・イン・レジデンスを務めていた高校のために書かれたジョン・ペニントン John Pennington『アポロ』Apollo (1968) や、カール・フィッシャー社の委嘱プロジェクトでベンソンやハンソン、エリー・シーグマイスターやカルロス・チャベスと並んで書かれたサミュエル・アドラー Samuel Adler (1928-) A Little Night and Day Music (1976) のように、不確定性や微分音といった手法を用いた作品もこの分野に現れます。

*21:むしろ日本では、ブージー・アンド・ホークス社のために手がけた『キャンディード序曲』(1955/1986) や『スラヴァ!』(1977/1978) などのレナード・バーンスタイン作品の編曲のほうが知られているかもしれません。バーンスタインガーシュインと並び、広く人気がありながら管楽作品は少ないアメリカの作曲家で、バンド分野ではもっぱら編曲で親しまれていますが、いくつかのファンファーレや金管アンサンブル作品のほか、クラリネットソロをフィーチャーしたビッグバンドのための『プレリュード、フーガとリフ』Prelude, Fugue and Riffs (1955) が取り上げられます。

*22:この延長線上にあるのが、R.シュトラウス『万霊節』Allerseelen の編曲 (1955) で知られるアルバート・オリヴァー・デイヴィス Albert Oliver Davis (1920-2004) の『ウェールズの歌』Songs of Wales (1970) であったり、ピエール・ラプラント Pierre La Plante (1943-) の American Riversongs (1991)『草原の歌』Prairie Songs (1998) をはじめとする作品群などでしょう。さらにこうした作風をヴァーチャルに再現したヒュー・スチュアート『グロスターの3つのエア』Three Ayres from Gloucester (1969) のような作品群もあります。

*23:こちらはボブ・マーゴリス Bob Margolis (1949-) による The Battle Pavane (1981) Fanfare, Ode and Festival (1982) Soldiers' Procession and Sword Dance (1999) などのルネサンス音楽のシンプルな編曲につながるでしょうか。レイサムはイギリスの先達に倣った民謡調の Brighton Beach (1954) と Proud Heritage (1956) の2曲のマーチでも知られています。

*24:40-50年代に大学・プロバンドに作品を提供した作曲家たちも、C.ウィリアムズVariation Overture (1961)『献呈序曲』Dedicatory Overture (1964) 、パーシケッティ『セレナード第11番』(1960) やM.グールド『小組曲Mini Suite (1968) のように60年代に低難易度作品を提供していますし、チャンス『呪文と踊り』(1960)『ミュージカル・コメディのための序曲』(1962) 、デロ=ジョイオ 『「ルーヴル」のための音楽』(1966)『風刺的な踊り』(1975) 、ネリベル『フェスティーヴォ』(1968) 、ジェイガー『第三組曲』(1966)『ジュビラーテ』(1978) をはじめ、両分野に並行して重要なレパートリーを残す作曲家も珍しくなくなります。

*25:リードの『スラヴ民謡組曲』(1953) 、『グリーンスリーヴス』Greensleeves (1961) 、バッハ『甘き死よ、来たれ』Come, Sweet Death (1979)『主よ、人の望みの喜びよ』Jesu, Joy of Man's Desiring (1981) 、フランク『天使の糧』Panis Angelicus (1988) といった編曲や『ゴールデン・イヤー』The Golden Year (1997) 、バーンズの『アルヴァマー序曲』(1981)『アパラチアン序曲』(1983)『ヨークシャー・バラード』(1985) 『ヒーザーウッド・ポートレイト』(1991) 、カーナウの『コリアン・フォーク・ラプソディー』Korean Folk Rhapsody (1988) 『カンティクム』Canticum (1988) 『ネイサン・ヘイル・トリロジーNathan Hale Trilogy (1990) 『~の一日』シリーズ A Day at the Zoo (1996)/Museum (1997)/Circus (1998)/Fair (2003)/in the Space (2007) など。

*26:急速部ではリズムの強調や五音音階風の音選びによって角ばった書法も見られますが。作品の出版が始まったのは1960年前後からで、『序奏とファンタジア』Introduction and Fantasia (1970) が知られたあと、『海の歌』A Song of the Sea (1977)『スターフライト序曲』Starflight Overture (1980)『大草原の歌』Song of the Prairie (1983) などがふたたび知名度を得ます。

*27:いわゆる「トレジージョ」で、ハバネラを源流の一つに持ち、ラグタイム、ジャズ、ロックにも流れ込みあるいは共鳴して埋め込まれています。

*28:コープランド風の角ばったシンコペーション→2小節単位の3-3-3-3-2-2刻みのバッキング→ハイハットの刻みやクラベスが加わる3-3-2、と推移するエルマー・バーンスタイン『荒野の七人』(1960) テーマ曲が源流方向にいるかもしれません。

*29:リードの交響曲第1番第3楽章 (1952) やエリクソン『リズム・オブ・ウィンズ』のように。

*30:『アクラメイション』Acclamations (1990)『宣言、バラードと終曲』Declaration, Ballade and Finale (1990)『アッシュランド・パーク』Ashland Park (1996)『バビロンの流れのほとりで』By the Rivers of Babylon (2000) など。

*31:Excellentia Overture (1985) Dedicata (1988) など。しかしシンフォニック・ポップス色が強い Arabesque (1987) Regatta for Winds (1993) を経て、『ペガサスの飛翔』Flight of the Pegasus (1994) 『光の中へ』Into the Light (1997) といったあたりはスウェアリンジェン調にポピュラーの味付けを濃く施した趣ですし、さらに『炎の踊り』Fire Dance (2001) Ceremony, Chant and Ritual (2002) などはR.W.スミス風のドラマティックさが特徴的で、なかなか括るのが難しい作曲家です。

*32:当時幅広いバンドの手が届く緩徐曲はエリクソンの2曲ぐらいしかなかった、と回想するスウェアリンジェンがデル・ボルゴ『アダージョAdagio for Winds (1974) に言及していないのは、ソロ重視の書法のためでしょうか。ほかにもデル・ボルゴは Chant Rituals (1993) 、Shaker Variants (1995) Songs of the Whalemen (1995) といった作品をレパートリーに送りこんでいるほか、低難易度の弦楽合奏作品も広く演奏されています。

*33:打楽器のリズムや完全音程を多用して武骨さを演出しながら土俗的な題材を扱うジェイムズ・プロイハー James D. Ployhar (1926-2007)『スー族の旋律による変奏曲』Variations on a Sioux Melody (1978) やマーク・チャッタウェイ Mark Chattaway (1946-)『マザーマ』Mazama (1985) などにたどっていけると思います。描写的で多彩な打楽器群は、取り組みやすさを意識しながらさまざまな音響効果を持ち込んでいたダニエル・バクヴィッチ Daniel Bukvich (1954-) の『イン・メモリアム、ドレスデン1945』Symphony No. 1, "In Memoriam, Dresden, 1945" (1978)『ヴードゥーVoodoo (1984)『ダイナソーDinosaurs (1991) なども前提にあったでしょうか。

*34:Ancient Voices (1994) The Forge of the Vulcan (1997) Celtic Air and Dance (2007) Earthdance (2010) など。

*35:いわゆるポップス・オーケストラの人気指揮者として知られるライニキーはハリウッドの映画音楽からの影響も受けており、『セドナ』と『シルバラード』Silverado (1985) 、『激流の中へ』Into the Raging River (1999) と『インデペンデンス・デイ』(1996) の類似もよく指摘されます。

*36:作品出版自体は80年代から行われています。

*37:アイアナコーン After a Gentle Rain (1979) のような前例はありましたが、さらに低い難易度を狙った Plymouth Trilogy (1981) ではすこしばかり伝統的な用法に寄っているなど、シュワントナーを転折点とする音色感が浸透してくるにはすこし時間がかかっています。

*38:Under An Irish Sky (2002) Stormchasers (2006) Velocity (2008) Voyage to the Edge of the World (2013) など。

*39:Digital Prisms (2001) Cold Mountain Saga (2006) Exhilaration (2009) Ascending (2013) など。

*40:Songs of Old Kentucky (2007) J.S. Jig (2008) Cumberland Falls Overture (2008) など。Mambo Furioso (2006) See Rock City (2011) といった難易度の高い作品も知られています。

*41:The Blue Orchid (2005) Carpathia (2007) Carnegie Anthem (2012) など。

*42:Clouds That Sail in Heaven (2007) Rampage! (2009) Critical Mass (2010) など。

*43:joyRiDE (2005) Shadow Rituals (2006) The Cave You Fear (2014) など。

*44:Snakebite! (2008) Sol Invictus (2009) といった作品のほか、マーチングバンドのための編曲群や、Minimalist Dances (2014) など高グレード作品でも知られます。

*45:Cyclone (2013) Uproar (2013) Equilibrium (2015) など。

*46:Paper Cut (2010) Tight Squeeze (2012) Rock Music (2016) などバンドと打ち込み音を共演させる作品で知られます。

*47:Afterburn (2009) Steel (2011) Winds of Change (2016) Darklands Symphony (2014-2017) など。

*48:April (2004) Pale Blue on Deep (2011) Temperance (2016) など。

*49:Luminescence (2009) Melodious Thunk (2012) Unquiet Hours (2017) など。

*50:So Wondrous Bright (2015) Sunchaser (2017) Byzantine Dances (2018) など。

*51:…at Twilight (2014) Resplendent Light (2016) Shimmering Joy (2018) など。

*52:ほかに、別記事で言及する作曲家からは例としてウィテカー『スリープ』Sleep (2000)『オクトーバー』October (2000) 、ティケリ『シンプル・ギフト』Simple Gifts: Four Shaker Songs (2002)『ジョイ』Joy (2005)『アース・ソング』Earth Song for Band (2012) 、マッキー『アンダートウ』Undertow (2008)『シェルタリング・スカイSheltering Sky (2012)『ライトニング・フィールド』Lightning Field (2015) 、ブライアント Bloom (2004) The Machine Awakes (2012) などが重要なレパートリーになっています。

*53:たとえばホルストの第一組曲の場合、マイケル・ストーリー Michael Story (1956-) による第3楽章だけの短縮編曲や、スウィーニーによる第1、第3楽章のダイジェスト版、ロバート・ロングフィールド Robert Longfield (1947-) による全曲に技術的な調整をわずかに加えたバージョンなどが存在します。低難易度作品を提供してきた作曲家たちは少なからず編曲の分野でも活躍してきた歴史があり、彼らや Jay Bocook (1953-) Paul Murtha (1960-) Ralph Ford (1963-) といった編曲を軸に活動している面々もレパートリー形成という面では重要な役割を担っています。

*54:Phoenix Overture (2010) Jubilance (2011) Flight: Adventure in the Sky (2011) City of Dreams (2016) など。

*55:留学後の作品では『スター・ファンタジー』(2008)『アンコール!』(2010)『ソングス』Songs for Wind Ensemble (2011)『小さな祝典音楽』(2011) など。

*56:『星の船』Star Ship (2002) 『エンシェント・フラワー』Ancient Flower (2015)『ウィンターミルキーウェイWinter Milky Way (2017) など。弦楽合奏の分野でも知られています。

*57:スウェアリンジェンたちへの意識を公言しており、『フラワー・クラウン』(2012)『碧空への出航』Voyage into the Blue (2014)『明日へ吹く風』(2016) などがあります。